子宮内膜症とは
子宮内膜は、卵巣から分泌される女性ホルモンの作用でだんだん分厚くなり、月経が始まると、出血と一緒に子宮の入り口から流れ出てしまいます。この子宮内膜が子宮の内側以外のところにある状態を子宮内膜症と呼びます。
子宮内膜が子宮の内側以外のところにあると、毎月月経に合わせて出血するわけですが、この出血が出ていく場所がありません。そのためその場所にどんどん出血がたまってしまうことになります。毎月出血がたまると生理痛がしんどくなったり、体が血液を吸収しようとして炎症が起こり、癒着を起こしたりします。子宮内膜症が良く起こる場所は卵巣、卵管、子宮と直腸の間のダグラス窩と呼ばれるくぼみ、卵巣の裏側の腹膜などです。癒着が起こると卵管に卵子が取り込まれにくくなったり、卵管の中を卵子が運ばれにくくなったりするだけでなく、炎症のために受精も妨げられてしまいます。
子宮内膜症がひどくなるとたまった血が嚢腫をつくることがあります。たまった血がチョコレート色をしているのでチョコレート嚢腫と呼びます。
子宮内膜症は非常に頻度の高い病気で、腹腔鏡を行うと不妊の方の約60%にみつかります。
診断
子宮内膜症の方を内診しますと、ひどい子宮内膜症の場合は内膜症の部分を押さえると痛みがあり、血がたまってできた硬い腫瘤にふれることもあります。また超音波検査で腫瘤が見つかることもあります。でもこれらの診断法はいずれも腫瘤を作ったかなり大きな子宮内膜症しか診断できないという欠点があります。血液の中のCA-125という物質を測定すると高値を示すこともありますが、子宮内膜症があるからといって必ずCA-125が高値を示すわけでもありません。したがって、所見を総合的に判断して診断する必要があります。
治療
子宮内膜症による不妊の治療には内科治療と外科治療、そして体外受精があります。
内科的な治療としてはGn-RHアゴニストという薬や超低用量の女性ホルモン製剤が使われます。Gn-RHアゴニストという薬は卵巣からのホルモンの分泌を抑制し月経を止めてしまう作用を持っています。月経がなくなると子宮内膜症の細胞は出血せず委縮して、子宮内膜症がよくなるというわけです。この薬には点鼻薬(スプレキュア、ナサニールなど)と注射(リュープリン、スプレキュアMPなど)があり、いずれも作用の仕組みは同じです。点鼻薬は毎日使う必要がありますが、注射は1ヶ月に1回だけです。超低用量の女性ホルモン製剤も排卵を止める作用があり、月経を少なくするか、あるいは無くしてしまう効果があります。
治療は4-6ヶ月続けます。治療が終わると月経痛なども軽くなり妊娠しやすくなりますが、月経を止めている間に内膜症が完治するわけではないので時間が経つと再発する可能性があります。
また、Gn-RHアンタゴニスト(アゴニストとは反対の作用を持つ内服薬)、レルミナも子宮内膜症の治療に使用されます。この薬は毎日内服の必要があります。
なお、外科的な治療としては腹腔鏡手術がありますが、術後に卵巣に残っている卵子の数が減ってしまっていることが多く、お勧めしない場合が多いです。
体外受精も子宮内膜症が原因で妊娠しにくい時にきわめて有効な治療です。体外受精では卵巣から採取した卵子と精子を体の外で受精させて子宮に戻しますので、内膜症で卵管や卵巣に癒着があっても妊娠には全く問題ありません。