大谷レディスクリニックでは、不妊治療に精通したスタッフが一般不妊治療・体外受精・顕微授精など、不妊でお悩みの方のための治療に取り組んでいます。

不妊症の治療

排卵障害の治療


経口の排卵誘発剤による治療

■クロミフェン療法

クロミフェン(商品名クロミッド、セロフェン、フェミロン)は軽い排卵障害の治療に有効な薬です。月経の3~8日目から一日0.5~3錠を5日間服用します。この薬は長い間排卵がない場合など重症の排卵障害の場合には効きませんが、排卵が遅れたり、時々排卵がなくなったりする方などにはきわめて有効です。

排卵障害だけが不妊の原因の場合、この薬で排卵が起こるようにすれば1年で60~70%の方が妊娠されます。

視床下部にはエストロゲンがどれくらい分泌されているかどうかを感知して、それに応じて性腺刺激ホルモン(FSHやLH)の分泌量をコントロールするセンサーがありますが、クロミッドはこのセンサーに結合して、エストロゲンがセンサーに届かないようにしてしまい、視床下部にエストロゲンの量が足らないと判断させる作用を持っています。エストロゲンが足りないと判断すると視床下部はもっと性腺刺激ホルモンの分泌を増やすように下垂体に信号を送ります。

ただ、子宮頚管や子宮内膜にもエストロゲンが届かなくなってしまうことがあります。このため、子宮頚管粘液が増えない、子宮内膜が厚くならないといった副作用が起こることがあり、排卵に対する有効性に比べて妊娠に対する有効性が低くなる傾向があるのがこの薬の難点です。でもクロミフェンは注射の排卵誘発剤などに比べれば多胎などの副作用も少なく、この薬だけで妊娠される方が多いのも事実です。漫然と投与すべき薬ではありませんが、軽い排卵障害の場合にはファーストチョイスです。

クロミフェンを服用された場合、排卵前の卵胞の直径は25mm~30mmになります。

■シクロフェニール療法

シクロフェニール(商品名セキソビット)はクロミフェンと同じような作用機序の薬ですが、排卵誘発作用、副作用共にクロミフェンよりマイルドな効き方をします。クロミフェンで子宮頚管粘液が減るような場合にはこの薬の適応になります。

hMG(FSH)-hCG療法(排卵誘発剤の注射による治療)

クロミフェンやシクロフェニールが効かないような重症の排卵障害の場合や、これらの薬で排卵しても妊娠に結びつかないときに適応になります。hMGやFSHは卵巣の卵胞に直接働いて卵胞を発育させる作用があります。hMGかFSHのいずれかを、月経開始後5日目から筋肉注射します。注射の方法には毎日注射する方法、隔日に注射する方法などがあり、注射する量も一日75~300単位と幅があります。注射の方法は排卵障害の原因、程度などに応じて加減します。クロミフェンなどの経口の排卵誘発剤と併用することもあります。

hMGやFSHを注射するときには超音波で卵胞の大きさや数を厳密にモニターします。卵胞が次第に大きくなって18~20mmになったときにhCGを注射すると36~48時間後に排卵が起こります。

hMGとFSHはいずれも卵胞を大きくするという同じ作用をもっていますが、hMGにはFSHとLHの2種類のホルモンが含まれるのに対し、FSHはhMGに含まれるLHを取り除いて純粋なFSHを取り出した薬です。現在は日本では認可されていませんが、欧米ではFSHの遺伝子を取り込ませた培養細胞に作らせた遺伝子組み替え型のFSHが臨床に使われています。日本でも近い将来、より純粋な遺伝子組み替えFSHが主流になると思われます。

hMG(FSH)-hCG療法を行えば視床下部の異常、下垂体の異常などによる排卵障害の場合、ほとんどの方で排卵をおこすことが出来ます。

この治療の副作用として、双子以上の多胎妊娠の可能性が増えること、また、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)といって排卵した後卵巣が腫れて、腹水が貯まる症状が出ることがあります。卵巣過剰刺激症候群が起こりやすいのは35歳以下、痩せている、多嚢胞卵巣症候群、治療で妊娠したとき、などです。重症の卵巣過剰刺激症候群が起こった場合、入院して治療する必要があります。

高プロラクチン血症の治療

プロラクチンはお乳を出す働きをするホルモンですが、このホルモンがお産の後以外の時に高くなることがあります。プロラクチンが高くなると排卵がうまくいかなくなったり、排卵は起こっても高温期が短くなって黄体機能不全になったりします。

プロラクチンが高くなる原因としては、特発性といって大きな原因はみつからない場合が多いのですが、下垂体の腫瘍や甲状腺機能低下症なども原因になります。下垂体腫瘍の場合には手術の必要がある場合もありますから、プロラクチンの値が飛び抜けて高いときには脳外科で精査を受ける必要があります。

特発性の場合の治療はテルロンやパーロデルといった麦角製剤と呼ばれる薬です。テルロンやパーロデルを服用するとプロラクチンが下がって、排卵がうまくいくようになり、また、黄体機能不全などのホルモンのバランス異常も改善されます。これらの薬を服用し始めた直後はむかつきや頭痛が起こることがありますが、しばらく服用を続けるとこんな症状もなくなることがほとんどです。

多嚢胞卵巣の治療

多嚢胞卵巣で排卵しにくい場合にはまずクロミフェンを試してみます。症状が軽ければクロミフェンで排卵可能です。クロミフェンを5日間服用しただけでは排卵しない場合にはさらにもう5日間クロミフェンを服用する2段階投与を行います。

これでも排卵しない場合にはメトホルミンという糖代謝を改善する薬やプレドニゾロンというステロイドホルモンの薬を併用します。それでも排卵しない場合には排卵誘発剤の注射による治療の適応になりますが、多嚢胞卵巣の方にFSHやhMGを使うと卵胞がたくさん発育して、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群が起こりやすいので注意が必要です。
どうしても排卵しにくい多嚢胞卵巣の方では腹腔鏡手術で卵巣に小さな穴をたくさんあけると排卵しやすくなります。この手術の効果は1年から1年半続きます。

卵巣性無排卵症の治療

卵巣の卵胞が大きくならない、あるいは卵胞がないといった場合には排卵は難しくなってしまいます。卵巣に卵胞が残っているのかどうかを調べるには卵巣から組織をとってきて顕微鏡で調べる必要がありますが、卵巣を削り取る必要があり現実的ではありません。

卵巣が原因で排卵がうまくいかない場合、下垂体は卵巣にもっと働きなさいというシグナルとしてFSHというホルモンをたくさん分泌するようになります。FSHは卵胞を大きくする働きをもっていますが、このホルモンが高い状態が続くと、卵巣ではFSHの受容体が減ってしまい、いくらFSHがあっても卵胞が反応しなくなってしまいます。こういった場合、しばらくFSHを下げてやると卵巣がまた排卵するようになる可能性があります。FSHを下げるためには卵胞ホルモンと黄体ホルモンを周期的に服用するカウフマン療法を行ったり、あるいはスプレキュアやナサニール、リュープリンなどのGn-RHアゴニストと呼ばれる薬を使ったりします。卵巣がFSHに反応するようになった頃にhMG(FSH)-hCG療法を行うと排卵が起こることがあります。この方法で排卵の可能性があるのは卵胞が残っているときだけで、卵巣に卵胞が残っていない場合には排卵は不可能です。現在の医学では卵巣に卵胞が残っていない時には第3者に提供してもらった卵子を使って体外受精を行う以外に妊娠の方法はありません。

なお、卵巣が原因で排卵しない状態が続く場合、エストロゲンが分泌されない状態が長く続くことになります。エストロゲンは女性の骨のカルシウムが減るのを防ぎ、コレステロールが高くなって動脈硬化や心筋梗塞が起こるのを予防し、肌のコラーゲンを保ち、膣や膀胱の粘膜を守るなど様々な働きをしています。エストロゲンが分泌されない状態が続くと体に悪影響がでますから排卵誘発がうまくいかない場合には、女性ホルモンを服用して体の健康を保つ必要があります。

肥満やダイエットによる排卵障害の治療

体重と排卵には密接な関係があります。太りすぎても痩せすぎても排卵に悪影響をおよぼしてしまいます。

太りすぎてしまって排卵の調子が悪くなった場合には生活習慣を改善してカロリーやバランスのとれた食事を心がけ、少しずつ体重を元に戻すようにしましょう。体重がなかなか減らなくて、排卵もうまくいかないといったときには排卵誘発剤を使って排卵を起こすようにします。

逆に、一ヶ月に何キロも体重を落とすような極端なダイエットを行うと、それが原因で排卵しなくなってしまうことがあります。これを体重減少性無月経といいますが、こうなってしまうと卵巣からエストロゲンが分泌されなくなってしまうので骨のカルシウムが減ってしまいます。無理なダイエットは中止して体重を少しずつ標準体重に戻すようにしましょう。それでも排卵が戻らないときには排卵誘発剤を使うか、しばらく卵胞ホルモンと黄体ホルモンの薬で月経をおこすようにすると排卵が回復することがあります。

甲状腺の異常による排卵障害の治療

甲状腺は体全体の代謝をコントロールしています。甲状腺機能の異常による排卵障害は甲状腺機能低下症の場合がほとんどです。甲状腺機能に低下の見られる場合にはチラーヂンなどの甲状腺剤を服用していただく必要があります。なお、甲状腺疾患では甲状腺機能低下と亢進が交互に起こることがあるので治療に際しては甲状腺ホルモンや甲状腺関連の抗原の値を定期的に検査して、薬の使い方を適切に管理することが重要です。

一方、甲状腺機能亢進の場合には排卵障害は少ないのですが、流産や妊娠中毒症、甲状腺クリーゼなどの妊娠中や分娩後の異常が多いので妊娠前から甲状腺機能を専門医にしっかり管理してもらう必要があります。

黄体機能不全の治療

排卵した後、卵巣では卵胞が黄体になり、ここから黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されます。この黄体ホルモンは子宮内膜に作用して子宮内膜を着床しやすい状態にし、着床した後は流産を防ぐ働きをしています。この黄体ホルモンが十分に分泌されないと不妊、不育の原因になります。基礎体温の高温期が10日以下、排卵一週間後に測定したプロゲステロンの値が10ng/ml以下の時に黄体機能不全と診断されます。

黄体は卵胞からできますから、しっかりした卵胞ができないと黄体も十分に働きません。しっかりした卵胞を作って、黄体機能不全を防ぐ治療としてクロミッド、セキソビットやhMGなどの排卵誘発剤を使う方法があります。また、黄体からのホルモンの分泌を促進して黄体機能不全を防ぐために高温期にhCGを注射します。さらに、黄体ホルモンそのものを薬や注射で補充することで黄体機能不全の治療を行うこともできます。

黄体化非破裂卵胞(LUF)による不妊の治療

卵胞が破裂して卵子が飛び出すのが排卵ですが、卵胞が破裂しないまま黄体になってしまうことがあります。これを黄体化非破裂卵胞(LUF)と呼びます。黄体化非破裂卵胞が起こる原因ははっきりしていませんが、卵胞の発育の異常や卵巣の周りの癒着が関係していると考えられています。黄体化非破裂卵胞が起こっているときには、おなかの中の癒着が心配ですからできれば腹腔鏡で癒着の有無を確認し、もし癒着があれば剥離するようにします。また、hMG-hCG療法でたくさんの卵胞を排卵するようにするとそのうちの一部でも排卵することが期待できます。もしどうしても黄体化非破裂卵胞が治らないときには体外受精も考慮する必要があります。