大谷レディスクリニックでは、不妊治療に精通したスタッフが一般不妊治療・体外受精・顕微授精など、不妊でお悩みの方のための治療に取り組んでいます。

不妊症の原因

排卵の異常


排卵の異常

排卵が起こって卵子が卵巣の中から飛び出さなければ妊娠しません。ちゃんと排卵しているかどうかはどうすればわかるのでしょうか。もっとも簡単な方法は基礎体温を測ることです。排卵した後には黄体ができ、そこからプロゲステロンが分泌されますが、このプロゲステロンには基礎体温を上昇させる作用があります。基礎体温をつけるには毎朝、目が覚めてから体を動かす前に婦人体温計で体温を測定して基礎体温表に記録します。基礎体温表をつけていると、排卵すれば基礎体温は排卵前に比べて高くなり、月経周期を通してみると、体温の低い時期と高い時期の2相性になります。

基礎体温表をつけていると、排卵しているのかどうか、だいたいの排卵日はいつか、今月経周期のどのあたりなのか、などいろいろなことを知ることができます。もし妊娠すれば高温期が続きますから、妊娠を知る手がかりにもなります。基礎体温表をつけるメリットはたくさんありますから、不妊の治療を受けられるときには面倒ですが、この表をつけましょう。
ただあまり神経質になるとかえって逆効果です。そうでなくても女性の性周期は精神状態に大きく左右されます。基礎体温の上がり下がりに一喜一憂していたのでは、起こる排卵も起こらなくなってしまいます。2~3日つけ忘れても診断、治療には問題ありませんから、基礎体温は負担にならない範囲で測定してください。

基礎体温がはっきりしないときや、黄体が十分に働いているかどうかわからないときに、血液の中のプロゲステロンをはかる方法も排卵を知るための良い方法です。一番確実に排卵を知る方法は、排卵の前後に卵胞を超音波で診察して排卵を観察することです。排卵すると卵胞の中に出血しますから超音波Bスコープで診ると排卵したかどうかが確実にわかります。


視床下部の異常

視床下部から下垂体に向かってGn-RHというホルモンの指令がでて女性の月経周期をコントロールしていますが、これがうまくいかなくなると排卵も乱れてしまいます。視床下部は体調、精神状態、栄養状態などのいろいろな異常の影響を受けます。女性の体はデリケートですから、ストレスの多い現代社会ではさまざまなきっかけで視床下部の調子が悪くなり、排卵もうまくいかなくなることが多くあります。

視床下部に異常があって排卵がうまくいかない場合には、まずクロミフェンという薬を使います。クロミフェンは視床下部にエストロゲンが足りませんという信号を伝える働きをします。すると視床下部は下垂体にもっと働けという信号を出すので、排卵が起こるようになるわけです。クロミフェンは視床下部の軽度の異常には非常によく効く薬です。また、クロミフェンで排卵がちゃんと起こるようにした後で、人工授精を行うと妊娠に結びつくことがよくあります。
クロミフェンだけでは排卵しない場合にはhCGという注射と組み合わせて治療すると排卵するようになることが多いようです。
それでも排卵しにくい場合には、hMGあるいはFSHという注射にhCGを組み合わせた治療を行えば確実に排卵します。

脳下垂体の異常

脳下垂体は視床下部からのGn-RHによる指令を受けてFSH、LHという卵巣を刺激するホルモンを分泌しますが、ここに異常があるとFSHやLHが分泌されなくなってしまい、卵巣で卵胞が成熟しないため排卵しなくなります。脳下垂体の異常による排卵障害の場合には、FSHあるいはそれと同じ働きをするhMGというホルモン注射で卵胞を成熟させた後、LHと同じ働きをするhCGという注射を打てば排卵を起こすことができます。

多嚢胞卵巣

卵胞がまだ小さい内に卵胞の成長が止まってしまい、また卵巣の表面の膜も分厚くなって排卵しなくなることがあります。こういった場合、卵巣には成長の停止した卵胞がたくさんあり、あたかもたくさんの嚢胞があるように見えるので多嚢胞卵巣と呼ばれます。体全体の複雑に入り組んだホルモンの相互作用の異常によって起こると考えられていますが、はっきりした原因はわかっていません。男性ホルモンが増えて毛が濃くなったり声が太くなったりすることもあります。LHやFSHその他のホルモンの分泌状態を測定すれば診断することができますし、超音波検査では卵巣の中に小さな卵胞がたくさんあるのがわかります。腹腔鏡検査を行えば卵巣の膜が白く分厚くなっていて、その中にたくさんの成長の止まった卵胞があるのが見えます。

この病気の治療は、薬による治療と手術による治療があります。薬ではクロミフェンやクロミフェンとhCGの組み合わせ、あるいはFSHやhMGとhCGによる治療などが行われます。

手術による治療では、昔は開腹して卵巣の一部を楔形に切り取る手術が行われていましが、最近では腹腔鏡で卵巣の表面の厚くなった膜に電気メスやレーザーで切れ目をたくさん入れてあげる手術を行います。こうすると膜の切れ目から排卵するようになって妊娠しやすくなります。

早期卵巣機能低下症

どんな女性でも更年期を迎えると卵巣の機能が低下して排卵が起こらなくなり、エストロゲンやプロゲステロンの分泌も低下します。しかし若い方でも卵巣の機能が働かなくなって排卵が起こらなくなる場合があります。卵巣の機能が低下すると脳下垂体からはたくさんのFSHやLHがでて、何とか卵巣がうまく働くように刺激しますから、血液の中のFSHやLHは正常に比べて非常に高値になります。どうして若い方の卵巣が働かなくなるようになるのかはわかっていません。

このように卵巣自体の機能が悪くなる排卵障害は、もっとも治療の困難な排卵障害といえます。こういう場合には腹腔鏡検査を受けて卵巣の組織の一部を取り出して顕微鏡で検査し、発育前の未熟な卵胞があるか無いかを調べます。少しでも発育前の卵胞があればホルモン療法で排卵の誘発ができる可能性があります。もし卵胞が全く無い場合には、他人の卵子をもらうしか妊娠の方法はありません。現在日本では他人の卵子の提供は行われていませんから、どうしてもこの治療を受けたい方は外国で受けるしかありません。

ところで卵巣に卵胞が無いということは、エストロゲンが分泌されていないということです。これは更年期の女性と全く同じ状態ですが、若い方でエストロゲンが分泌されないと、骨粗鬆症や動脈硬化など更年期以降に起こる症状が早くから起こってしまうことになります。これを防ぐためにはエストロゲンを服用する必要があります。

黄体機能不全

排卵した後、卵巣では黄体ができてエストロゲンとプロゲステロンが分泌されますが、この黄体が十分働かないと子宮内膜が受精卵を受け入れる状態にならず、妊娠できなくなってしまいます。

基礎体温で高温期が10日以下だったり、排卵後約一週間して測ったプロゲステロンの値が低かったりする場合、高温期の子宮内膜を少し取ってきて顕微鏡で調べるとこの病気の診断がつきます。黄体機能不全の方には排卵した後、卵巣や子宮内膜を刺激するホルモン療法を行う、あるいは排卵そのものを正常に起こさせる治療が必要です。

高プロラクチン血症

プロラクチンは脳下垂体から分泌され、妊娠中や分娩後に高くなり母乳を分泌させる働きをもつホルモンです。一方でこのホルモンはFSHやLHの正常な分泌を妨げる働きがありますから、このホルモンが妊娠と関係ないときに高くなると排卵障害を起こしてしまいます。

プロラクチンが高くなる原因としては下垂体の異常による場合が多く、時に下垂体に腫瘍ができていることもあります。プロラクチンの値があまりに高いときには、脳外科を受診したほうがよいでしょう。それ以外にも甲状腺の機能が低下したときや、精神安定剤や胃潰瘍の薬によってもプロラクチンが高くなることがありますから、不妊症の治療を受けるときには他の病気についてもはっきり医師に伝えましょう。
高プロラクチン血症の治療には何種類かの内服薬があり、いずれもよく効きます。

黄体化非破裂卵胞

排卵の前には卵胞が成長して直径約2cmになります。卵胞がこれくらいの大きさになると下垂体からLHというホルモンが多量に分泌され、排卵します。排卵の際、卵巣では非常に複雑なメカニズムが働いて卵胞が破裂します。ところがこの卵胞の破裂のメカニズムがうまく働かないと卵胞が破裂しないまま黄体になってしまいます。こうなると、黄体ホルモンは分泌されるので基礎体温は高温になりますが、卵子は卵巣に閉じこめられたままになってしまい妊娠はできません。黄体化非破裂卵胞は排卵のメカニズムの不調や卵巣の周りの癒着などが原因となります。

甲状腺機能異常

甲状腺機能が低下すると排卵が起こりにくくなります。甲状腺ホルモンは体全体の代謝をコントロールしている重要なホルモンで、卵巣も例外ではありません。不妊症の方は、一度は甲状腺ホルモンの検査を受けましょう。
一方、甲状腺ホルモンが過剰に出すぎる場合、不妊症になることはあまりないのですが、妊娠中や分娩後に急に症状が悪くなることがあるので十分な管理が必要です。