神戸ARTレディスクリニックでは、不妊治療に精通したスタッフが一般不妊治療・体外受精・顕微授精など、不妊でお悩みの方のための治療に取り組んでいます。

検索

Q. PGT-Aは安全な治療方法なのでしょうか?

A. 通常の体外受精と変わりません。
体外受精の副作用
PGT-Aでも排卵誘発剤を使って、卵胞をたくさん成熟させる「排卵誘発」を行ないます。薬に敏感に反応する体質の方の中には、排卵誘発剤を使うと期待した以上の数の卵胞が成熟して、お腹の張り(腹部膨満感)、腹痛や腰痛、吐き気、尿量の減少などの副作用を生じることがあります。この副作用を「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」と呼んでいますが、最近採用しているアンタゴニスト法やクロミフェン法(低刺激法)、クロミフェン+hMG法(中刺激法)による卵巣刺激ではほとんど発症しませんので、さほど心配はいりません。
また、採卵時には、経腟超音波で卵巣の様子を観察しながら、細い針を腟から卵胞に刺して卵子を採取します。針を刺すので多少の出血が見られます。
採卵の際に雑菌が骨盤内に入ると、骨盤腔や卵巣周囲に細菌感染を起こし、骨盤腹膜炎を発症する可能性があります。清潔な操作を行ない、抗生物質の投与で予防します。
受精卵にしても、培養液の中で数日培養され、凍結、融解という自然妊娠とは異なる過程を経るわけですから、自然とまったく同じというわけではないと考えられますが、体外受精をしなければ妊娠できない方にとってはメリットの大きな方法だとされています。

胚生検の安全性
胚盤胞に育った受精卵から胎盤になる部分の細胞(栄養外胚葉)を3~5個採取しても、生まれる赤ちゃんに影響が及ぶことはありません。米国の無作為比較試験でも着床率、出産率にほとんど影響のないことが証明されています(1)。
PGT-Aと、遺伝性疾患回避のための着床前胚遺伝子検査(PGT-M)とを合わせて広義の「着床前検査(PGT)」と言います。ヨーロッパ不妊学会(ESHRE) では登録施設での「着床前検査」についての統計を継続的に発表しています。2011年までに「着床前検査」を経て生まれた8453人の赤ちゃんを調べたところ、赤ちゃんに何らかの異常が見られた確率は通常の妊娠と変わらないと確認されています(2)。ベルギーのブリュッセル自由大学(AZVUB)では「着床前検査」を受けて生まれた赤ちゃんを5~6歳まで追跡調査した結果、「着床前検査」を受けて生まれた子どもと、顕微授精で生まれた子ども、自然妊娠で生まれた子どもの間で、認知能力、精神発達(3)、心理社会的な発達(4)に差はないことが報告されています。
現在までに世界で何万人もの赤ちゃんが「着床前検査」を経て誕生していると推測されますが、検査を受けたことが原因で子どもに異常が生じたとの報告はありません。
とは言っても、「着床前検査」は1990年に最初の赤ちゃんが誕生した比較的新しい医療技術なので、「着床前検査」を経て生まれた人の多くがまだ子どもを持つという状況にありません。高齢になった例もありません。世代を超えて安全性が確認できている状況ではありません。

この診断法を受けて誕生したお子さんについて、心配なことがあればいつでもご相談ください。

(1) R.Scott et al. Fertil. Steril. 2013 Sep, 100(3) ; 624-630.Cleavage-stage biopsy significantly impairs human embryonic implantation potential while blastocyst biopsy does not: a randomized and paired clinical trial
(2) M. De Rycke et al. Human Reproduction, Vol.30, No.8 pp. 1763‒1789, 2015. ESHRE PGD Consortium data collection XIII: cycles from January to December 2010 with pregnancy follow-up to October 2011
(3) C.Winter et al. Human Reproduction, Vol.29, No.9 pp. 1968‒1977, 2014. Cognitive and psychomotor development of 5- to 6-year-old singletons born after PGD: a prospective case‒controlled matched study
(4) C.Winter et al. Human Reproduction, Vol.30, No.5 pp. 1122‒1136, 2015. Psychosocial development of full term singletons, born after preimplantation genetic diagnosis (PGD) at preschool age and family functioning: a prospective case controlled study and multi-informant approach