PGTについてQ&A 着床前検査

Q. PGTを受けるメリットはどのようなものでしょうか?

A.

1 染色体異常を持つ胚の移植を避けることで、移植をしても着床しないという治療の不成功、移植後の流産を減らすことができ、患者さまの精神的身体的負担を減らし、早期の出産につなげることができます。
通常の体外受精では、全ての胚盤胞をグレード順に移植していきます。たくさんの胚盤胞がとれる方の場合、移植を繰り返すだけで何年もかかる場合があります。その間に流産、死産をすればさらに時間が費やされるということになります。PGT-Aをすれば、1つ目から妊娠継続可能な胚が移植できるわけですから、流産の心配も減り、早期に出産できる可能性が高くなります。
もし、移植可能胚が見つからなくても、次の月には新たな採卵へ向けての準備に取り掛かることができます。少しでも若いうちに採卵を繰り返すことにつながります。

2 染色体正常胚を移植してもうまくいかない場合には、着床不全、不育症がないかなど他の要因を追求する必要があることに気づき、治療結果の改善につなげることができます。通常の体外受精では着床しなくても、「きっと染色体異常が原因だと思いますよ、次は上手くいくでしょう」と見逃されがちですが、PGT-Aをしていれば、染色体正常胚を移植したのにうまくいかないということがはっきりしますから、では、何を探すのかということにすぐにつながります。

3 移植可能な染色体正常胚を見つけることができない場合も、PGTをすることで、自身の状況を知り、自身のデータをもとに納得してその後の治療選択をすることができます。

Q. 胚のグレードと染色体の情報は一致するのでしょうか?

A.

沢山の方から取った沢山の胚盤胞をグレード順に並べれば、グレードの高いものの中には染色体情報の良いものが多いです。しかし、一人の方からとった胚盤胞をグレード順位に並べても、染色体との関連性はありません。グレードトップの胚が染色体異常胚で、グレードの低い胚が正常胚ということは普通です。
染色体情報が良いと診断されたものが複数ある場合には、グレード順に移植していくということになります。グレードの良い胚は着床しやすい胚です。

Q. PGTを受けて妊娠した場合出生前検査を受けるように言われると聞くのですが?

A.

当クリニックではPGTを受け沢山の方が出産されていますが、検査結果が間違っていたという例はありません。ですので、検査結果の確認のために出生前検査を受けていただくことを奨めてはいません。
また、女性の年齢が上がるにつれて増加する染色体の数の異常を心配して出生前検査を受ける方は多いのですが、当クリニックのPGTの精度は97%ですから、可能性は通常の妊娠の30分の1に下がります。40歳の方の場合染色体数の異常を持つ赤ちゃんを出産する確率は50人に1人くらいなのですが、1,500人に1人に下がります。ほぼ心配はいらないということになります。

Q. 40歳です。初めて体外受精を受けます。初めからPGTを受けるのが良いのでしょうか?

A.

はい、40歳の方ですと、染色体の数的異常をもつ胚盤胞の割合が半分以上になります。PGTを受けていただくのが良いと思います。
体外受精をすると、それまで妊娠できなかった方も妊娠する可能性が上がります。しかし、年齢の高い方の場合、妊娠をしたけれど染色体の数的異常が原因で、流産、死産になる可能性も高いです。初めて妊娠したのに流産、その後妊娠することはなく、たった一度の妊娠が流産という悲しい結果になってしまうことがあります。PGTをすればそれは避けることができます。

Q. 30歳です。流産を繰り返したのですが、PGTで流産せずに出産できますか?

A.

30歳の方の場合、胚盤胞の染色体の数的異常率は30%くらいです。今までの流産の原因が染色体異常であった可能性はあまり高くはありません。したがって、体外受精をして、PGTを受け染色体正常胚を移植しても流産になる可能性もあり、慎重に考える必要があります。まずは不育症などの検査を受けられることをお勧めします。
ご夫妻の染色体検査をして転座など変異が見つかればPGT-SRの対象になります。PGT-SRが必要な方の場合には、特に移植可能な胚の割合が低いので、染色体の数的異常率の低い若い年齢でのPGT-SRをお勧めします。

Q. 35歳です。初めて体外受精を受けます。初めからPGTを受けるのが良いのでしょうか?

A.

35歳の方の場合は、染色体の数的異常率は50%以下です。染色体異常を持つ胚はふつう着床しないだけですから、1回目の移植で着床しなくても、2回目の移植で出産できる可能性は高いです。実際37歳以下の方の場合は、PGTをしない方が効率的に早期の出産につながる可能性が高いです。流産率もあまり高くはないので、通常の体外受精を試みて、もしうまくいかなければ、次の採卵はPGTを受けることも可能です。初めからPGTでなくても良いのではないでしょうか。