大谷レディスクリニックでは、不妊治療に精通したスタッフが一般不妊治療・体外受精・顕微授精など、不妊でお悩みの方のための治療に取り組んでいます。

お知らせ

HCGについて

HCGは不妊治療に於いて、排卵のタイミングを合わせるため、あるいは黄体機能不全を防ぐために多くの病院で使われている薬です。実は私(院長)もHCGの助けを借りて(だけではないですが)子供を授かりました。
HCGは排卵のトリガーとなるLHというホルモンと殆ど同じ生物活性を持っています。
それもそのはずで、HCGはαとβの二つのサブユニットから出来ていますが、αサブユニットはLHと全く同一で、βサブユニットの遺伝子はLHβ遺伝子の隣にあり、LHβの遺伝子が複製されて出来たものです。ただ、複製の過程でターミナルコドンと言って、遺伝子からホルモンが作られる際に終わりとなる部位が1塩基だけ変異したので、HCGβの遺伝子にはLHβより長いCターミナル(尻尾のようなものと考えて頂いても良いと思います)があります。
このCターミナルは生物学的にホルモンの作用は持っていませんが、ただ、HCGが体から出て行く時間を長くしています(半減期24時間)。従って、HCGの注射を受けられるとしばらく体の中にHCGが残ることになりますが、これは受精卵の着床にとっては好都合です。HCGやLHは排卵後に卵巣に出来る黄体からのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌を促し、エストロゲンやプロゲステロンは子宮内膜を着床しやすくて、流産しにくい状態にしてくれる作用があるからです。黄体機能補助に使われる薬はHCGあるいは黄体ホルモン製剤ですが、HCGは黄体ホルモンのみならず、卵胞ホルモンの分泌も促してくれるので、ホルモンのバランスが良くなり、より着床しやすい内膜を作ることが出来ます。
HCG投与の翌周期に遺残卵胞が出現することが多い、卵巣過剰刺激症候群や黄体機能不全が起こりやすいとうった誤解もあるようですが、遺残卵胞はクロミフェン(クロミッド、セロフェン等)を使った周期に起こりやすく、HCGが原因ではありません。また、クロフェンとHCGを使った後に卵巣過剰刺激症候群が起こりやすいのもクロミフェンの副作用です。HCGは卵巣からの黄体ホルモンと卵胞ホルモンの分泌を促進してくれるので、黄体機能不全を予防するのに効果的で、黄体機能不全の治療に保険適応が認められております。一方、クロミフェンには子宮内膜のエストロゲン受容体を妨害する作用があるので、子宮頸管粘液を減らす、子宮内膜が分厚くならない等の副作用があります。また、クロミフェンは体からなかなか出ていかない薬で体の中の薬が半分になる(半減期)のに5〜7日かかります。これはHCGの半減期24時間と比べてもとても長い時間です。
このことがあるので、私どもではタイミング法などで排卵誘発にどうしてもクロミフェンを使わざるを得ない場合でも必要最小量を使っております。また、低刺激法の体外受精では、主として排卵を遅らせて未熟卵が採れてしまうのを防ぐ目的でクロミフェンを使用する場合がありますが、内膜が薄くなって、新鮮胚移植では妊娠率が極端に下がるので、受精卵を一旦凍結して、クロミフェンが体から抜けてから子宮に戻してあげております。日本産科婦人科学会の全国の統計でも新鮮胚移植よりも凍結胚移植のほうが3倍程度、出産率が高くなることが示されています。最近ではクロミフェンに比べて半減期が短い(24時間)フェマーラを使うことも多くなりました。
HCGが卵子の質を下げるといった誤解もあるようですが、これも全く間違いです。HCGが卵子の質を下げるのなら、HCGが多量に分泌される妊娠後には卵子の質が下がるはずですが、そんなことはありません。HCGはLHに比べて体の中に残る時間が長いのは事実ですが、投与した次の周期にはLHと同じ一桁台以下に下がっており、卵子の質を下げることはありません。
ただ、私どもではHCGの使用にこだわっているわけではなく、排卵のタイミングを合わせるのには点鼻薬や点鼻薬と同じ成分の注射(Lucrin)を使うことも出来ます(健康保険の適応外になりますが…)。また、黄体機能補助にはデュファストンやルトラールなどの黄体ホルモン製剤を使う事も出来るので、HCGの使用に抵抗がある場合には遠慮せずにおっしゃってくださいね。
体外受精に際しても、私どもでは主としてアンタゴニスト法か低刺激法を採用しておりますが、HCGを使わずに点鼻薬か、点鼻薬と同じ成分の注射(Lucrin)を使う事が多くなっています。